« 夜更かし | メイン | 地図の上書き »

2005年06月18日

二つの地図

僕の部屋の壁には二つの地図が貼られています。
一つは世界地図、もう一つは東京の都心詳細図です。
世界地図の縮尺は3千8百万分の1、東京の都心詳細図は1万五千分の1です。
二つの地図はほぼ同じ大きさなのですが、表している範囲には約2500倍の違いがあります。
僕は毎日、この二つの地図を見比べながら生活をしています。
そうすることによって、二つの縮尺を身体知として獲得したいと思っています。

世界地図にはただの点でしかない東京。
その点を2500倍拡大すると、交差点名もビル名も読み取れる地図になります。
そしてその地図の中を、僕は毎日メッセンジャーとして右往左往しているわけです。
特に、渋谷区、港区、中央区、千代田区、新宿区の南半分を走り回っています。
この範囲ならば、地図上の地名が実際はどんな光景なのか、大体分かります。
すべて分かるというわけではないのですが、かなり分かります。地図はある程度まで身体化されています。まだ所々で道の繋がりが曖昧だったりはするのですが、毎日この範囲を重点的に100km程走っているのだから、少しずつですが、地図は日を追うごとに確実に体に染み込んでいっています。

大手町1丁目から渋谷3丁目まで、どれぐらいの距離があるのか、体が知っています。
西麻布二丁目から銀座7丁目まで、どのようなルートがあり、どのような起伏があり、どのような光景があるのか、かなり記憶されています。
この、「地図が体に染み込んでいく喜び」が毎日あるから、僕はメッセンジャーを続けられているのかもしれません。

そして世界地図。
この地図には3年5ヶ月かけて引いた4万5千キロの線があります。
そして、その長さを思い出すことができます。
自分の力で走った距離だから、例えば「ユーラシア大陸って大体これぐらいの大きさ」と想うことができます。地図をじいっと見つめて、イランの乾燥した地平線を思い出すこともできるし、タンザニアのサバンナも思い出せます。そして当然のことながら、出会った人や、そこを走っていた時の自分の心の状態もありありと思い出します。
世界地図は雄弁です。例えばたった二文字「ラサ」という字を見つけるだけで、思い出す感情は膨大です。世界地図には行間がたくさんあります。

壁に二つの地図を張り、毎日見比べて、時には見入ったりして、僕は一体なにを企んでいるのか、実はよく分かりません。しかしながらとても刺激的であることは確かです。なにかとても好ましい感覚があります。ミクロとマクロの視座と言ってしまえばそれまでなのですが、その視座は同時に身体化もされているのです。体が視座と連動して反応するのです。これはかなり希有な経験だなと、毎日地図を見比べながら思い、僕は興奮さえするのです。きっと僕は地図が好きなのでしょう。そして地図を身体化するのが大好きなのでしょう。

体が知っている地図。
それが2500倍違う二つの縮尺であるということ。
それだけのことが、何かもどかしいほどに、嬉しい気持ちにもさせ、嬉しく苦しい気持ちにもさせます。

投稿者 tsuyoshi : 2005年06月18日 02:55

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://hanamote.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/41

コメント

ラサ行ってみたい。死ぬまえに。
地図を身体に染み込ませる能力と機動力がうらやましい。
今日、夢でホンゴーさんの家へ遊びに行ったら、トラがいました。おそるおそる戯れましたが、楽しかったです。それにしてもどうして庭でトラを飼っているのですか?
鵠沼海岸より

投稿者 wangsoo : 2005年06月18日 08:29

あ、トラに会えたんだ。意外とおとなしかったでしょ?
悪いやつじゃないのでまた戯れてください。
トラは飼っているのではなくて、勝手に住んでるのです。
いろいろ事情があるみたいよ。詳しくは聞いてないけど。
阿佐ヶ谷より

投稿者 tsuyoshi : 2005年06月18日 14:32