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2007年07月14日

銭湯の詩

銭湯の詩

僕が住んでいるアパートには風呂がついていないから銭湯へ行く
夜中の二時まで開いているのでいつも真夜中に家を出る

玄関に用意してある銭湯セットを手にし
つっかけをはいてアパートを出る
最初の曲がり角を右折すれば二分で熱い湯の銭湯
左折すれば三分でぬるい湯の銭湯がある
僕は熱い湯が好きなので迷わず右折する

二分歩くと左手にコンビニが見える
その向かいがいつも行く銭湯だ
玄関でつっかけを脱ぎ、番台にいるおばさんに回数券を渡し脱衣場へ行く
服を脱ぎ、ロッカーの鍵をかけ、ガラス戸を引いて浴場に入る

五列のカランが並んでいる浴場を見渡し空いている場所に座る
体と髪をごしごし洗い、それから湯船に浸かる
はじめは熱いのでひざまで入りじっとする
それからゆっくりとかがみ肩まで入る
目をつむり、大きく息をはく

湯に身を浸すと自分がいなくなる

しばらく湯に浸かってから湯船を出る
再びカランの前へ座り呆然とする
こいつは誰だと思いながら曇った鏡に映る自分の姿を眺める
それから顔を洗い、ひげを剃り、歯を磨く

銭湯には老人と若者が半々ぐらい来ている
ここではみな身に鎧っているものを脱ぎ
産まれたときの姿でごしごしと体を洗い湯に浸かっている
ここは地上に現れた浄土であり、エデンであり、彼岸だなといつも思う
ここには知恵の実を食べる前の人間の姿がある

もう一度湯船に浸かる
一回目ほど熱くは感じない
深々と湯に身を沈めしばらくじっとする
湯に浸かることは一度死ぬことだ
小さく一度死に、羊水から出てもう一度産まれる

湯船から出て軽くシャワーを浴び、浴場を出て体を拭いて服を着る
少しふらつく足取りでおやすみなさいと番台のおばさんへ言い銭湯を後にする
真夜中の二時少し前
こんな時間なのに通りには人が行き交っている
コンビニの明かり、自販機の明かり、街灯の明かり
目にするものすべてが美しい
泣きながら産まれたときのようなよろこびに満たされ
ゆっくりとアパートへ帰る

投稿者 tsuyoshi : 2007年07月14日 00:37